大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和23(オ)175 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人林徹上告理由第一点について。

原判決の認定するところによれば、被上告人は訴外Dから本件土地の所有権を回

復するやその頃小作人等に其の旨を告げたのであるが、それ以前においても被上告

人は右Dの代理人として小作人から小作料を受けた事実の認められる以上、原判決

の認めたように被上告人は右Dの代理人として爾後被上告人のために本件土地を占

有すべき旨を告げた趣旨と解して少しも無理ではなく、また、被上告人が右Dの代

理人として小作人に所有権の移転を告げたものと認められる以上、民法一八四条の

第三者に相当する被上告人の承諾があつたものと認めても少しも不合理ではない。

従つて原判決が本件土地について民法一八四条の指図による引渡があつたものとし

たのは所論のように経験則に反するものとはいえない。論旨は昭和二一年法律四二

号農地調整法改正法附則二項の要件としての引渡は、特に客観的に明白であること

を要する旨主張するのであるが、証拠によつて引渡の事実が認められる以上、右附

則二項の適用に際しても引渡があつたものとして少しも支障はない。尚論旨(二)

で上告代理人の引用する原審証人E、Fの各証言中原審認定に反する部分及び甲二

九号証の三の記載内容は原審の措信しないところであり、また、乙六、七号証は原

審の採用しないところである。論旨は理由がない。

同第二点及第三点について。

自作農創設特別措置法による農地の買収については、農地委員会は、本件におけ

るがごとく登記名義人ではないが実際の所有者から買収計画に対し異議の申立があ

つた場合に、民法一七七条によつて登記の欠缺を主張することを得ないものと解す

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べきことは、大法廷判例の示すとおりである(最高裁判所昭和二五年(オ)四一六

号同二八年二月一八日大法廷判決参照)。従つて、原判決が、上告人は登記の欠缺

を主張して被上告人の本件土地所有権の取得を否定することができない旨を判示し

たのは正当である。論旨は理由がない。

同第四点について。

行政事件訴訟特例法一一条によつて裁判所が処分を違法としながら請求を棄却し

なければならないのは、処分を取り消すことが却つて公共の福祉に適合しないと認

められる場合に限るのである。本件の場合において、農地買収計画の所有者を誤る

ことは所論のように軽微な瑕疵ではないのみならず、本件買収計画を取り消したか

らと言つてそれが公共の福祉に適合しないと解すべき何等の事由はない。従つて原

判決が同条を適用しなかつたのは正当であつて、論旨は理由がない。

同第五点について。

本訴の争点は、訴外Dを所有者として定めた本件買収計画の適否である。従つて

被上告人を所有者として定める買収計画を仮定してその当否を判断する必要はない。

すなわち、被上告人が昭和二〇年一一月二三日現在における不在地主であるかどう

かは、本件買収計画の適否には関係がない問題であるから原判決が被上告人の住所

について判断を示さなかつたのは当然である。論旨は理由がない。

同第六点について。

原判決は、被上告人が昭和一八年七月一六日実弟Dから本件土地の所有権を回復

することを合意し、同年一〇月一二日残額二千五百円をDに支払い、同人から本件

土地の所有権移転登記手続に要する一切の書類の交付を受けた事実を認定している

ことは所論のとおりである。原判決の挙げている証拠を総合すれば右認定は当審に

おいても肯認することができる。その余の論旨は証拠の取捨判断に対する非難であ

つて採ることを得ない。論旨は理由がない。

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以上説明のとおり論旨はすべて理由がないから本件上告はこれを棄却することと

し、民訴四〇一条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

この判決は裁判官一致の意見によるものである。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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